映画『ダーウィンの悪夢』鑑賞

グローバル化と奈落の夢渋谷のシネマライズにて本日より公開の映画『ダーウィンの悪夢』を観てきました。フーベルト・ザウパー氏による監督・構成・撮影のドキュメンタリー作品。海外ではすでに04年に公開され、各国で映画賞を受賞したとのこと。大まかな概要は以下の通り。

アフリカのヴィクトリア湖はかつて「ダーウィンの箱庭」と呼ばれるほど豊かな生態系を誇っていた。しかし、外来魚ナイルパーチが放流されたことから状況は一変する。一大魚産業が誕生し経済は繁栄。だがカメラは、その陰にある貧困、売春、エイズストリートチルドレン、環境破壊を映し出してゆく。そこにあるのはアフリカだけの問題ではない。ナイルパーチの輸出先は、第一にヨーロッパ、次いで日本なのだ。そして、グローバル資本主義がもたらす悪夢の連鎖が次々にひも解かれてゆく。
2004 年ヴェネツィア国際映画祭での受賞を皮切りに、世界中の映画祭で多数受賞。昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭では審査員特別賞・コミュニティシネマ賞を受賞し、本年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。海外メディアもこぞって大絶賛し、そのあまりに衝撃的な内容に、社会論争までもが巻き起こった。世界を騒然とさせた傑作ドキュメンタリー!!

舞台はタンザニアヴィクトリア湖周辺。冒頭から輸送のための飛行機の着陸・離陸の後景が繰り返し登場するのが印象的でした。もちろんヨーロッパや日本に提供されるナイルパーチ白身を大量に運搬するための輸送機。アフリカへやってくるときは周辺諸国の戦争ための弾薬等の補給がなされているという噂もあるとのこと。
映画では、湖の周辺はそれまでの在来種の漁業を行っていた人々が仕事からあぶれ身体の危険にさらす可能性の高い漁業をせざるを得ず、子供はストリート・チルドレンとなり、女性は娼婦とならざるを得ない人も多く、薬物やエイズも蔓延し、現地民は湖から取れる魚の白身部分は高価なため食することは出来ずその残り部分(アラ)しか食べられない現状が、戦争になれば兵士として高賃金が得られるので戦争を望む人々の声が、次々と紹介されます。
世界銀行や国連の関係者は国際的な支援によってタンザニアをはじめとするヴィクトリア湖周辺の国々に「先進国に輸出できるほどの品質を持つ商品を生産できる環境が整った」との旨の話をしていました。「海外からの支援」とは先進国と呼ばれる地域の市場へ商品力のある資源を提供できる能力にこそ向けられているようでした。
さらにいえば、グローバリゼーションと呼ばれる世界規模での資本主義のQCDのシステムが回ること、つまり1.規定の品質・パフォーマンスが保たれること(Q:Quality)、2.同品質であればより安価な値段であること(C:Cost)、3.納期が遅れないこと(D:Delivery)、これらの条件が満たされるのであれば地球のどの場所であれ取引が行われる現在、そのシステムが回る外側に、多大な負荷をかけている現状が示されているように感じました。ヴィクトリア湖周辺に何度もやってくる輸送機も国際的な支援もすべてその目的のために動いているとしか思えないような状態。タンザニアという日本にいる僕らから普段目に見えない地域でのむき出しのグローバル資本主義の悲惨さとともに、おそらく僕らの社会でも件のシステムを回すために様々な外部への負荷がかかっているのではないかと、悲惨さのレベルは違うとしても、感じました。
あまりうまく言葉にできませんが、これが僕らの住む世界の(ある一面の)話であることは確かかと。ぜひまずはご覧になることをお勧めいたします。

  • MIYADAI.com

追記:2006-12-24

映画を観るための/観たあとのための参考リンク。