映画『硫黄島からの手紙』鑑賞

kwkt2006-12-13

109シネマズ川崎にてレイトショーで鑑賞してきました。クリント・イーストウッド監督の硫黄島二部作の後編。前作のアメリカ側からの視点から一転して日本軍の硫黄島での絶望的な地下壕での戦いを描いた作品です。


特に戦闘シーンでは島を俯瞰できるカットはなく、わずかに栗林中将の司令室で島の地図が描かれるのみ。その栗林中将のもとにも正確な情報が上って来ないため、観客も戦況の全体のイメージも難しい、状況は絶望的であることだけがわかる作りとなっておりました。そして前線の兵士たちにとってはただただ壕の外側の攻撃を仕掛けてくる敵と周囲には味方の惨状があるだけの世界しかなく、どこでどう戦っているか、敵がどのように攻撃を展開しているのかも(一兵卒の視点からは)全く不明な状況が描かれていました。
日本兵が捕虜として捕まえた若いアメリカ兵の死後に見つけた母親からの手紙の内容を知るシーンで(アメリカ帰りの西竹一が読み聞かせるという設定)、日本兵が敵であるアメリカ兵にも家族がいて帰りを待っている親がいることに気付き、「俺は鬼畜米英という言葉を鵜呑みにして何も相手のことを知らなかった」と述懐するように、この映画を観たアメリカの観客もアメリカで国家の歴史的・英雄的な戦いとして扱われる硫黄島の戦いの相手方にも背景があり、守ろうとしたものがあり、帰りを待つ人々がいたことに気付くことになるのでしょうか。絶望的な戦況の中、日本兵全員が必ずしも狂信的に戦っていたわけでもないことが、様々な想いを抱いて戦っていたことが、しかしそれでも戦わざるを得なかった不条理な状況が、大変よくわかるようにできているように思いました。

以下のリンク先のサイト運営者の方の祖父の手記をアップしている「祖父の硫黄島戦争体験記」は圧巻。映画を観た方もこれから観る方もぜひ一読することをお勧めいたします。

追記:2006-12-14

宮台先生がイーストウッド監督の映画『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』について文章を書かれています。

追記:2006-12-22

京都カフェオパールの店主さんの日記です。

id:hazama-hazamaさんの見解。

追記:2006-12-27

id:Arisanさんのエントリーよりトラックバックをいただき、コメントさせていただきました。