国際エイズ月間・日仏交流企画シンポジウム「これからの多様な性&家族&ライフスタイル」 参加
東京神田の駿河台にあるアテネフランセで開催された国際エイズ月間・日仏交流企画シンポジウム「これからの多様な性&家族&ライフスタイル」に行ってきました。登壇者は以下の通り。
- 赤杉康伸、石坂わたる:『パートナーシップ制度と日本』
- 東京メトロポリタンゲイフォーラム(TMGF)
http://www.geocities.jp/tmgf2001jp/default.htm
- 東京メトロポリタンゲイフォーラム(TMGF)
- 及川健二:『虹色の社会〜フランス同性愛事情〜』
- 大河原雅子:『私のマニフェスト』
- 大河原雅子・公式サイト - Just Use it!
http://www.ookawaramasako.com/
- 大河原雅子・公式サイト - Just Use it!
- 宮台真司:『成熟社会をどう生きるか』
- MIYADAI.com
http://www.miyadai.com/
- MIYADAI.com
- 上川あや:『沈黙から発言へ〜カムアウト議員の誕生とその後〜』
- 世田谷区議会議員・上川あや
http://ah-yeah.com/index.html
- 世田谷区議会議員・上川あや
当シンポジウムは僕にとっては知らなかったことが多く、大変学びの多いものになりました。特に上川あや区議のお話にはいたく感銘を受けました。そして自分が何も知らなかったことを思い知らされました。
※要注:以下のものは会場で配布された資料をもとに、私が見聞きして印象に残ったことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。
赤杉康伸、石坂わたる:『パートナーシップ制度と日本』
- 東京メトロポリタンゲイフォーラム(TMGF)
http://www.geocities.jp/tmgf2001jp/default.htm
及川健二:『虹色の社会〜フランス同性愛事情〜』
- フランスに2004年7月〜2006年3月に滞在し、『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』と『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』を刊行。
- 同性愛者をとりまく環境はその社会の成熟度を示すリトマス試験紙になると考えている。成熟した社会では同性愛者の権利が擁護され、全体主義の国では同性愛者は抑圧・排除される傾向にある。
フランスにおける同性愛者をとりまく環境
フランスにおける同性愛と世論
ポストモダン右翼
2007年大統領選挙&下院議員選挙
- 政権奪回を目指す野党第一党・社会党は大統領候補に女性政治家セゴレーヌ・ロワイヤル氏を擁立。ロワイヤル氏は「同性カップルの結婚を合法化する」と明言。
- 2007年にカトリックで保守的な国であるフランスで女性大統領が誕生し、同性カップルの結婚が認められるようになれば、2008年のアメリカ大統領選挙への影響は必至。ヒラリー・クリントンも同性愛者の権利擁護には理解を示しており、そのような方向に進めばフランス・アメリカは近い将来ゲイ・フレンドリーな社会になる可能性がある。
- 【参考】ゲイ@パリ 及川健二氏にインタビュー
http://allabout.co.jp/relationship/homosexual/closeup/CU20061203B/
大河原雅子:『私のマニフェスト』
- 大河原雅子・公式サイト - Just Use it!
http://www.ookawaramasako.com/
- 93年から3期連続都議会議員、2007年参議院選挙に民主党から出馬予定。
- 前所属(代表)の『東京・生活者ネットワーク』は地盤・看板・カバンがない女性を議会に送り出すことを目的に活動。
- 日本は世界的に見て女性のエンパワーメント指数は88か国中43位と低位。
- 日本は国民の教育水準も経済水準も高い豊かな国だが、女性の占めているポジションはまだまだ男性と対等とは言いがたい。
- 日本社会は「健常者で大人の男性」に仕切られてきた社会。そこに当てはまらない人々の声を社会に反映するために活動。
- 国会議員に立候補する理由として、国の動きはまだまだ男性中心なところがあるので変えていくのが目的。
- 年金問題を見てみても、(働いていても)女性が相手の男性によって加入する年金制度が異なってくる(世帯単位となる)。
- 制度的な差別を解決するためにも、世帯単位ではなく個人単位で権利を保障し、個人が生まれや属性で差別されず、持って生まれた個性が尊重され、自立を促進できる制度に変えていくべき。自立した個人たちこそが多様な価値観の中で共同・共生できるのでは。
宮台真司:『成熟社会をどう生きるか〜何がカッコいいのか〜』
- 社会が良き社会の到達点のイメージを共有できたとして、どういった手段・経路でその到達点へと近づけることができるか。
- 政治家は人々がカッコいいと思うように振舞う。国民が排除的であること/包摂的であることのどちらをカッコいいと思うかが政治家の振舞を決める。
- 日本は後発近代化国として出発。近代化の過程であえて個人を共同体から引き剥がし不安にした上で虚構の共同体に糾合するというメカニズムを採用して産業化してきた。
ヨーロッパの発想
- ヨーロッパは基本的には中間集団的な社会。階級集団・職能集団・地域集団などを信頼している社会。人々にとっては国家の存在よりも先に中間集団が存在。
- フランスではなぜ寛容であることがカッコいいか。宗教で言えばカトリシズムの伝統。中間集団的な社会であることが重要。国家という枠内で中間集団が共生している中で排除的に振舞ったり他の中間集団を排除しようとする人間はダメであるという発想になりやすい。
- しかし自由を破壊する自由は「ある程度」を越えると認められないという「公安の逆説」が伝統的に存在する。その「ある程度」の基準をどう設定するかによって、中間集団の共生を主張しているようで排除的になるという例が出てくる。
全体主義と家族の問題
- 家族とは何なのか社会学では一律な定義は存在しないが、社会学者パーソンズは最終的に「子供が育つための親密な人間の集まり」という機能と「成員の感情的安全を保障する」機能だけは家族的なるものに将来にわたって残ると考えた。パーソンズの立場が「機能主義」であったがゆえに、その結論は非常にリベラル。
- 昔ながらの伝統的な家族があるとして、社会環境が変化して伝統家族が営めなくなる人々が出てくる場合、
- なんとしても伝統家族を復活させようとして人々を抑圧・排除したりする立場を「保守」と呼ぶべきなのか。
- それとも社会の変化に対応して昔とはちょっと違うけれども「感情的安全」と「子供の社会化」という最小限の機能を満たすような場であればよいとするか。
- 前者を「典型家族」、後者を「変形家族」と言う。
- もはや一部で機能しなくなった伝統家族のみに固執することがはたして保守か、むしろ人々に必要な「感情的安全」と「子供の社会化」の機能を社会的文脈に合わせて確保しようとするのが保守ではないか。今日ある家族が昔と形が違っていたとしても家族的であると考えるべきではないか。そういうい人間が日本でなかなか生まれてこないのはなぜか。
- 【参考】MIYADAI.com
戦後家族の空洞化への処方箋
http://www.miyadai.com/index.php?itemid=151
上川あや:『沈黙から発言へ〜カムアウト議員の誕生とその後〜』
- 世田谷区議会議員・上川あや
http://ah-yeah.com/index.html
- 現在世田谷で区議会議員。かつて男性として生まれてきた。現在は女性として生活をするトランスジェンダーの一人。2003年4月にかつて男性であったことを公表して出馬し当選。
出馬の経緯
- 議員になるまでは民間企業で働いたが、かつて男性であったことは隠していた。
- 雇用保険・労災保険・会社の健康保険組合・年金制度すべてに性別がついてくるため、一度も正社員になったことはなかった。病院や選挙に行くと本人かどうか疑われれた。
- LGBT(性的少数者)の人々はイレギュラーな存在として社会の制度の枠組みに入れない。社会の仕組や意識が変わらなければ自分が自分であることを言葉にすることすら難しいと感じた。
- 2003年以前は日本では戸籍の性別を変更することが許されなかった。最高裁判所まで争ってもすべて却下、理由は変更する法律がないから。
- 行政窓口で各種書類の性別を変更してもらおうと思っても法律・通達・前例がないの一点張り。
- 立法府に行き、法律を作ってほしいと頼みに行ったが会ってくれる議員はほとんどおらず、関係者に資料を渡すだけ。その後は音沙汰なしの状態が続いた。
- 家西悟議員が初めて会って話を聞いてくれて「社会の関心が高まらないことには議員も動かない。姿が見える訴え方、声が聞こえる訴え方が必要」とアドバイスをもらった。
- 誰かが姿を現し声をあげるリスクを引き受けなけと、社会ではいないことにされてしまう自分たちは幸せになれないと感じていたため立候補を決意。
選挙、当選、その後
- 街の最初の反応は物笑い・嘲笑。
- 「私は女性として暮らしているけれども戸籍の上では男性です」と訴えると、誰もが振り返り好奇の目で見れた。
- 「親はどういう育て方をしたんだ」「社会がどうのこうのではなくあんたがおかしい」と罵られたこともあった。
- 応援してくれる人々もたくさん存在。
- 地方から200人もの人がボランティアで選挙応援。同性愛者の人たちがこっそりと応援メッセージを伝えてくれた。
- 結果、5000票弱を得て当選。
- 社会の中で生きにくい人々の声を代弁しようと様々な活動をしている。
- 役所は姿が見えない声が聞こえない存在はいないものとして扱う現実がある。
- 姿が見えない存在に対して人をつけ予算を使うということはしない。
- 怖いから黙っている気持ちはわかるが、黙っていて自然に棚からぼた餅が降ってくることはない。
- 問題が可視化することで受け止めてくれる人々がいることも訴えていきたい。
- 海外の会議に呼ばれるようになり、日本と海外の意識の差も見えてきた。ヨーロッパでは同性愛・バイセクシャルの人が公的な場で発言をしている。日本でも声をあげられるようになってほしい。
パネルディスカッション
- Q.日本では多様性にアレルギー的反応を示す人が少なくないが、多様な幸せの共生が実現する成熟した社会になれるか
- 近代化が進む中で共同体が空洞化したのち、企業が感情的安全を提供してきたため企業へのロイヤリティが高かった。
- 92年の平成不況の深刻化、雇用慣行の変化から企業が感情的安全を提供する場ではなくなった。
- 企業共同体の空洞化によって不安になった人々を利用して政治も経済も新たなるコミットメントへと動員しようとしている。日本では繰り返し行われているメカニズム。
-
- 日本では何がカッコいいかという感受性の鋭敏さが存在。何がカッコいいか示すためにはロールモデルが必要。
- カミングアウトした議員が登場することや映画・ドラマで取り上げられることが意味を持つ。
- Q.日本では芸能人などで同性愛者は登場しているが政治的になぜ同性愛者の問題が重視されないのか。
- 日本では同性愛者が身近に見えていない。文部科学省の教科書検定で、海外の家族形態の紹介で同性カップルという家族形態や一夫多妻の家族形態が注として紹介されたいたが、日本に馴染まないという理由で通らなかった。
- 行政にとっては海外の好ましくない事例であり、これまで存在しないしこれからも存在してもらっては困るという風に捉えている可能性が高い。
- 日本では同性愛者が行政や政治の場にアクセスしていくことが少ないこともある。トラブルに巻き込まれたくないということで政治にかかわりたがらないこともある。
- セクシャル・マイノリティが一人の国民・有権者として政治家・行政を利用する感覚が必要。
- 政治家からは有権者として見えていない可能性が高い。最後は顔が見えて有権者として動かないと社会は動かない。
-
- 成熟した社会とは、自分としての自分は同性愛者は嫌いでも、同性愛者を差別したり権利を認めない社会はおかしいと、個人的実存と社会的公正の問題を切り離して考えられる人間が多い社会。
- 自分の実存と社会の問題を直結してしまう人間は感情的安全がないと言える。こういう人がいるから社会が悪くなるというような仮想敵に対して簡単に動員されていまう。
- 感情的安全が確保されている人間は、他人がどのように感情的安全を確保しようとしているかについて(いい意味で)無関心になる。自分は自分なので他者を排除する必要はない。
※要注:以上のものは会場で配布された資料をもとに、私が見聞きして印象に残ったことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。
- 【参考】《知》の即興空間