暗黙の前提の補足です

内田氏関連のエントリー*1での「労働は常にオーバーアチーブメント」というのは暗黙の前提がありました。それは利潤率が正(利潤が出ていること)です。昨日購入した『マルクスの使いみち』に以下の定理の説明が注の中にありました。

マルクスの基本定理

置塩信雄が一九五五年に論文「価値と価格」において最初に証明した定理。「単純なレオンチェフ経済*2を想定する。労働一単位労働者の報酬で購入しえる商品を再生産するために直接・間接に必要になる労働の量が一単位よりも小さいとき、搾取率は正であるとする。このとき搾取率が正であることと利潤率が正であることは同値である。」また、この定理は、技術選択や固定資本の存在する経済を描いたフォン・ノイマン体系経済のもとでも(森嶋通夫が七四年に証明)、さらにより一般的な凸環境経済でも(ローマーが八〇年に証明)基本的に成立することが証明されている。

つまり「労働は常にオーバーアチーブメント」というときに想定される「労働」とは「利潤率が正である」という前提が必要である、と。このグラフ(http://f.hatena.ne.jp/kwkt/20060314180002)も利潤率が正であるという条件あってこそ成り立つと言えそうです。
であるので、kingさんよりいただいた「潰れる企業の場合、労働はアンダーアチーブメント」というご意見と、sivadさんよりいただいた「ベンチャー企業は、売り上げがなくても成り立っている」というご意見には、以下の様に回答できそうです。

  • 潰れる企業は生み出す価値を市場で利潤率が正になるような利益に転化できない(「労働は常にオーバーアチーブメント」の状態を保てない)から潰れる。
  • ベンチャー企業はいずれ利潤率が正になること(「労働は常にオーバーアチーブメント」になること)が予測・期待できるから今は生み出す価値を利潤率が正になるような利益に転化できてなくても投資がなされ維持可能。

でも普通「労働」っていうときは利潤率が正であることを想定すると思うのですが、別の可能性を考えずそう想定してしまったのは僕の怠慢です(かねぇ・・・なんて言ったらまた怒られそうですがw)。労働「一般」には当てはまらないかもしれませんが、まあ基本的には成り立つということはご理解いただけるのではないかと思う次第。補足として「利潤率が正の場合」ということを追記しておこうと思います。ご指摘ありがとうございました。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kwkt/20060315#p1

*2:こちら(http://www.aoni.waseda.jp/tkd/note/09.htm)に「レオンチェフ型生産関数」の説明があります。これが実現している経済状態を言うのでしょうか。