「改憲」選挙のモデル

これは確かに考えられる未来の光景。

私は「マガジン9条」の編集者たちに考えて欲しいことが一つあって、それは、今回の小泉首相の「郵政民営化を問う」解散と総選挙を、「憲法改正を問う」解散と総選挙に置き換えてシミュレーション・テストしてもらいたいということだ。この演出政治の実験と成功は、必ず法則化されて次の選挙にも応用されてくる。憲法改正を国会で発議する前には、必ずこのような擬似国民投票スタイルの解散総選挙を仕掛けてくるだろう。そして解散を断行した(演技力抜群の)総理大臣が、その夜に、渾身の演説で選挙の意義を説き、テレビの前の視聴者に向かって「賛成か反対か国民に問いたい」と迫り、翌日の世論調査で首相支持の数字がハネ上がったとき、果たして皆様はその総選挙で憲法改正を阻止できますか。そのことを今から考えておいて欲しいのだ。と言うより、今、そういう想像ができなければ、その人間は相当に鈍感な政治音痴で、改憲阻止の政治運動にも何も役に立たないだろうと私は思う。

そして解散後のテレビ番組では、竹中平蔵のような早口のディベート屋が出てきて、民主党菅直人に向かってこう切り出すはずだ。「菅さん、それじゃ聴きますが、民主党憲法改正に賛成なんですか反対なんですか」。同じ事が繰り返される。返答に詰まった民主党は、序盤での失地挽回のためにまたぞろ論陣を後退させ、「憲法改正には賛成だが、自民党憲法改正案には反対」を言い出して、ズルズルと自民党のペースに巻き込まれて行く。先制攻撃で受けたダメージを回復できず、選挙戦中盤では一転して自民党よりも過激な憲法改正案を言い始め、周囲を失望と失笑に包む。そして選挙が始まる直前には世論で拮抗していた賛成と反対が、いつの間にか圧倒的に改正賛成が多数となり、憲法改正が国民世論として固められる。古館伊知郎とみのもんたが例によって大活躍する。今回の郵政民営化選挙はシミュレーションなのだ。少なくとも護憲派は今回の戦術をそう看破して分析しなければならない。

多分「『国際貢献』に賛成か反対か国民に問いたい」という言い替えもでてくるのだろう。国際貢献の「悪い部分を想起させないようにして」。