映画『アトミック・カフェ』鑑賞

森達也氏が紹介・推薦されていた映画『アトミック・カフェ』(1982)が渋谷のユーロスペースで9月からレイトショーで上映されているのをようやく知り観てきました。


この映画は1940〜50年代のアメリカ政府が作成した映像を編集しただけの映画なのですがこれがスゴい。内容は主に核兵器ソ連に対してどう考えどう対処すべきかといったものなのですが、その不安・ヒステリーぶりはアメリカの昨今における「テロとの戦い」での大騒ぎが特殊ではないことがわかります。
ソ連核兵器を持ったと報じられると、インタビューで一般市民が「アメリカはもっと核兵器を持つべきだ」「共産主義者は社会の内外にはびこっている脅威だ」と声高に主張します。
アメリカ国内に敵が上陸したという仮定で、そのポイントに原子爆弾を使用し、その後兵士を突撃させるという作戦演習が行われる際、上官は兵士たちに「原爆により生じるのは爆発、熱、放射能であり、そのうち最もどうでもいいのが放射能だ。大丈夫、君たちに危険はない」と平然と言い、兵士たちは「放射能測定バッチ」なるものを付けて、訓練ではあるけれど実際に原子爆弾の爆心地へ突撃・・・。
不安の裏返しで、原子爆弾への脅威を語る者は臆病者とされ、声高に強硬論を叫ぶ人々。そして子供たちにはアニメ「亀のバート君」が「ピカッと光ったらどうすればいいのかな?」「そう、頭を引っ込めて隠れるんだ(DUCK&COVER)」「でもみんなは僕みたいに甲羅がないからどうすればいいのかな?」「そう、頭を引っ込めて机の下に隠れるんだ」とのことで、学校で子供たちが頭を引っ込めて机の下に隠れます。道端を歩いててもピカッと光ったらDUCK&COVER!自転車に乗っていてもピカッと光ったらDUCK&COVER!ピクニックに行っていてもピカッと光ったらDUCK&COVER!と今見れば本当にギャグでしかないのですが、それが本気で語られてた様子が描かれています。
監督はケヴェン・ラファティ、ピアース・ラファティ、ジェーン・ローダーの3人でラファティ兄弟はなんとブッシュ大統領のいとこらしく、しかもあのマイケル・ムーアはこの『アトミック・カフェ』を見て、ケヴェン・ラファティに映画の撮り方を教えてもらいにいったといいます。『ロジャー&ミー』や『ボーリング・フォー・コロンバイン』への影響は大な作品だったとのこと。


82年作成の作品で日本では84年頃に上映そうで、当時は反核の映画として受け止められたのではないかと思います。しかし今観るとただの反核というよりも人は・社会は不安になるとどういう行動をとるのかということを学べる映画になっていると思いました。


今年の12月にDVD化されるらしいのでぜひ。