人質事件・明らかに恥ずかしい発言

Yahoo News:20040426
日本人人質「反日的分子」 参院決算委で柏村武昭議員

 自民党柏村武昭参院議員(60)が26日の参院決算委員会で、イラクで人質にされた日本人について「自衛隊イラク派遣に公然と反対していた人もいるらしい。もし仮にそうだとしたら、同じ日本国民であってもそんな反政府、反日的分子のために数十億円もの血税を用いることは強烈な違和感、不快感を持たざるを得ない」と述べた。
これまで多くの政治家の失言が問題となったが(本人は失言と思っていなかったりするが・・・)、今回も「ポロッとはずみで出た」とか「不注意で不適切な表現をしてしまった」などというレベルではなく、また個人の信念云々の問題でもなく、政治家としての憲法の理解がまったくないことを如実に表すまったくもって恥ずかしい「失言」である。これではこんな政治家を戴いている国民にも近代的センスがないと思われても仕方がない。恥ずかしい。本当に超基本の原則を振り返ってみる。


【思想信条の自由】
まず近代国家は国民に思想信条の自由を保障している。国民は何を考えてもいいし何を思ってもいい。反政府的な思想すらいくら考えても考えるだけなら全く問題ない(ただその考えをおおっぴらに表現していればマークがきつくなるかも)。いわんや国民が政府の一政策に反対しようが全く問題ないどころか、政府のやっていることに本当に正統性があるのか検証する意味で有益ですらある。そもそも国民が思想信条の自由を体現するために国家に命令して(憲法に記述して)いるから、国家が国民の思想信条の自由を保障しているのであって、国家がお目こぼしで国家を否定しない範囲で国民の思想信条の自由を保障しているわけではない。


法の下の平等
また憲法第14条「法の下の平等」という概念では、国家が国民に法律を適用するときは「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」ことになっている。政府の政策に反対していたからと言っても日本国民である限り(日本国籍を持っている限り)、法律に基づいた国家からの扱いが違うことはありえないように国民が国家に命令して(憲法に記述して)いる。

もちろん柏村氏にも一国民として思想信条の自由が保障されているので個人としていかように考えようとも自由。しかし彼は代議士であり、国民に命令し義務を課す「法律」を立法する立場にある人間だ。つまり我々の行動を拘束する政治的決定を下すことのできる(影響を与えることができる)立場の人間だ。その立場にある人間が近代の基本原則である「思想信条の自由」と「法の下の平等」を理解しているとは思えない発言をするのは日本が民主的な近代国家であると謳っている以上、深刻な問題だ。

①近代国家において政治的決定を下す人間が近代的原則をわきまえてない(政治家の資質の問題)、②選挙で代議士の憲法の理解が争点にならずに選ばれている(政治家を選ぶ我々の資質の問題)、という点において非常に恥ずかしい。


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