イラク人質事件:まる激第159回・小泉政権の人質事件への対応は正しいのか

イラクでの日本人拉致問題についての今週のまる激の要旨。

  • 日本のマスコミの報道の仕方について
    犯行側から送られてきたビデオの映像に関して、外国のメディアが流している映像と比べると日本のメディア(テレビ)が流している映像はマイルドな当たり障りのないものばかりが流されている。首相官邸からメディア側に要請がきていて自主規制している可能性があり、もし犠牲者が出た場合は政権の情報操作に対してだけでなくメディアの報道の仕方も問われる可能性もある。
  • 個人の自己責任なのか?
    外務省の退避勧告にもかかわらず勝手に行ったんだから自己責任ではないかという議論が出ているが、物見遊山で行っている場合と民間で人道支援に行っている場合は別けた方がよい。人道復興支援を民間で行うことは各国でやっていることで、日本では特に手薄なのでむしろ推奨されるべきこと。今回のようなことは各国の人道復興支援に携わっている人全員に起こることではなく、政権がある政策を決断した国の人がターゲットになっている。つまり日本政府の政策次第では今回のようなことは起きなかった可能性もある。今回拉致された3人の自己責任だけに帰結すべきではない。民間で人道復興支援を行っている人がたくさんいる状況の中で、自衛隊が派遣されることは百害あって一利なしということは以前から指摘されてきていた。
  • 早期に「自衛隊の撤退はない」と宣言した意味
    小泉首相が早い段階で「自衛隊の撤退はない」と宣言したことで今回自衛隊を派遣した意味が明確になった。3日と短い期間ながら交渉の余地があったのに早々と結論を述べてしまった。その時点で人質は火あぶりになっても仕方がない。人質を救出する交渉戦略という意味から見ると不思議な行動だが、小泉政権から見ると合理的でもある。相手側の動機がはっきりする前の宣言がアメリカに対するプレゼンテーションと考えればアメリカからは評価される。つまり自衛隊アメリカ追従派遣であったということが明確になった。小泉政権の対処の優先順位はじめからはっきりしてるが、マスコミはそれを報じないため国民はそれに気付いてはいない。
  • 今回の拉致の目的は
    いてもいなくてもあまり変わりない自衛隊を撤退させよという要求はどこまで本気なのかという疑問が出てくる。それよりもアメリカに追従している国・国民はこのようになるという見せしめの意味が強いのではないか。そう考えると交渉の余地はそもそもあまりないし、帰結も残念ながら見えているのではないか。そんなに多くの可能性があるわけではないだろう。
  • NGONPO活動への影響
    自衛隊が派遣された段階で、NGONPOのメンバーはテロの標的になりうる国の国民であるという意識をもった。そのときに政府がどういう対応をするかということも明瞭に分かった。民間の人道復興支援というものが今回の事件で困難になったということがはっきりとわかった。民間人が復興支援に出向くという行為が大きなリスクへと変化した。
  • 福田官房長官の「撤退する理由がない」発言
    国策が民間人がリスクにあっているという理由で変更できないという意味。問題はそのようなリスクすら計算せずに国策的な決定をしたこと。そんなことになれば世界に恥を曝すこととなる。だからこのような事件が起こることも折込み済みで国策的な決定を下したという姿勢を堅持しなければならないので今回のような態度となるのではないか。記者は「3人の命は撤退するに値しないという意味ですか?」と聞いてみるべき。政府が自衛隊を派遣するということは今回のような事件が発生する可能性があるということが折込み済みだったが、国民はそれを理解していたか?
  • 国民の事件の受け止め方について
    人質の命をどうするかというカードを今国家が持っている。地雷やミサイルで人が死んだわけではなく、まだ国家の動き方次第で助かる可能性がある。この事件はどういう立場から論ずるかによって意見がずれる。日本政府の決定次第で危険な状態に追い込まれることがわかっていても自分のミッションとして人道復興支援に行く人がいる中、それを国がサポートするのか見捨てるのかということをまさに我々の側がウォッチするという憲法上の権利を存分に行使しなければならない。小泉首相は残念ながら国民がなんと言おうと自衛隊を撤退しないだろう。であるならばそういう小泉氏を首相として担ぐ与党を選挙で選んでしまったという我々の側に責任が最終的にかかってくる。また世論を導くべきマスメディアが何をしてきたのかということが問われてくる。
  • 厳しい現状
    イラクの人たちに今回の人質が占領軍の側の人間ではないことをどうにかして伝えようとする動きがあるが、国家の枠組みのほうが残念ながら大きいだろう。「日本人である」という意味はその人間がどういう人間であるかは問わず、犯人側が政治的初志を貫徹する可能性が高い。

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