映画『昭和歌謡大全集』鑑賞

渋谷シネアミューズにて映画『昭和歌謡大全集』を見てきた。
時は平成。未来への輝かしさは失われ、少年たちは鬱屈し、オバサンたちは沈滞している。ふとしたきっかけで昭和歌謡を愛する少年グループの一人がオバサンをナイフで殺し、仲間を殺されたミドリ会(名前がみな「ミドリ」のオバサンたちの会で昭和歌謡のカラオケが大好き)のメンバーは、仲間を殺した少年を殺し返すことを誓う。昭和歌謡を途中に挟みながら、復讐の連鎖が始まり、最初はオバサンたちが仲間を殺した実行犯の少年をナイフで刺殺。次は少年たちが仲間を殺した実行犯のオバサンをトカレフで至近距離から銃殺。オバサンたちはそれに対抗して少年たちのメンバーをロケット弾で肉片に粉砕。最後は生き残った少年(松田龍平)が核兵器でオバサンたちを街ごと爆砕。書いているだけでも非常なナンセンス。しかし鬱屈していた者たちは目的への輝きを取り戻し濃密な生をおくる。平成日本の沈滞を呪詛する思いと昭和歌謡を懐かしむ想いが実は表裏一体であることを見抜いた怪作。
個人的には劇中で俳優たちが昭和歌謡を歌うときに実際の曲をかぶせて流してほしかった。僕が生まれる前の昭和歌謡もたくさん登場したが、実際に知らなくても非常に懐かしいと感じさせられる。僕が10歳になるかならないかまでくらいの時期はまだ昭和歌謡の香りが幾分残っていたのでその記憶のデータベースが呼び出されることで懐かしさを感じさせるのではないか。