映画『マトリックス レボリューションズ』鑑賞

映画『マトリックス レボリューションズ』を見てきました。感想は「疲れた」「別にこんなものが見たいわけでもないのに」。
一作目の『マトリックス』がなぜすばらしかったかと言うと、有名なワイヤーアクションもさることながら、その世界観が面白かったためだった。キアヌ扮する気弱なシステムエンジニアのアンダーソン君(のちの主人公ネオ)が上司から遅刻をネチネチ責められ「こんなの現実じゃない」と現実逃避しようとしてたら「そうなんです。今あなたの目に映っている現実はコンピューターによって作られたマトリックスと呼ばれる仮想現実なんです。実はこの世界の外に『本当の現実』があるんです。目に見えている現実に惑わされずに覚醒して新しい現実を見なさい。それはあなたが選択するしかない。」という哲学的ともいえるし現実逃避的ともいえるモチーフがサイバーパンク作品*1として成立していたからだった。
しかし二作目『マトリックス リローデッド』、三作目『マトリックス レボリューションズ』は一作目からの続きの話として繋がっているわけだけど、『リローデッド』ではある程度マトリックスの世界について言及されたものの、今回の『レボリューションズ』では、サイバーパンクの世界観による「世界の謎」に言及するどころか、機会対人間のSF戦争を舞台とした「愛と勇気を信じろ」「愛する者(や郷土)のために命を賭けよ」というベタなメッセージのみ。ネオとスミスの戦いはすでにドラゴンボールとまったく遜色ないし(笑)、一作目では普通の人だったネオはついには神みたいになるし、演出も従来のハリウッド映画の文法通りに誰が生き残るかわかるようなものになってるし、CGは確かにすごいけどただそれだけでしかないし・・・。
そんなわけで見ていて非常に疲れたし、途中からは「こんなもの見たいわけではないんですけど」と思いっぱなしだった。続作を作ったことはハリウッドの興行的には成功だったと思うけど、作品としては一番お金をかけていない一作目が最も面白かったと思う。

*1:サイバーパンク cyberpunk】科学技術と社会の融合を描くSFのサブジャンルcybernetics(サイバネティックス)と punk(パンク)から。全般に退廃的で、モラルに縛られないアウトローを主人公に人間/社会描写を中心に描くものが多い。