『海を飛ぶ夢』鑑賞

海を飛ぶ夢概要だけ知ってて実はまだ観ていなかったアレハンドロ・アメナバール監督、ハビエル・バルデム主演の『海を飛ぶ夢』を観ました。海での事故による四肢麻痺状態の主人公が尊厳死を望み、それを巡る周囲の人間たちとのコミュニケーションを丁寧に描いた作品。


以下、ネタバレしかありません。ご注意ください。
周囲の暖かなサポートがあるといえども、主人公は「どうせ君たちには僕の気持ちはわからない」と言う。周囲の人々は、主人公に思いとどまらせようと「生きていることに価値はある」とか、あるいは「本人が望むのだから仕方がない」とか、あるいは賛成の立場に立っていたとしても「本当に死以外に解決方法はないの?」と質問したりする。すべて主人公の想いの奥まで触れることができない様子が坦々と描かれる。
そのような状況の中、主人公はある共感者を得て一時の安らぎを得、ある理解者を得て「計画」をついに実行に移すことになる。それでも「急ぐ必要はないのでは」「早まらないで」という友人に対して、「君もみんなと同じだね」というセリフが重い。それでも生きていてほしいということは主人公に苦痛を与えるだけでしかない(のかもしれない)。「健常者」と言われる人の言葉は抑圧としてしか通じない(のかもしれない)。そうなのだろうと思う。でもそれでいいのかとも思う。どちらかの立場にはっきり区別できる問題ではないのだろうと思う。それでも現実が在り何かしら進んでいくしかないとしたらどうすればいいのか、という問いが問いのまま残る。