読書の日々

日記でも紹介いたしました最近購入した酒井健著『バタイユ―魅惑する思想』と『宮台真司 interviews』を空いた時間に読んでいます。バタイユの言説に関する文章を読むとクラクラしたりムラムラしたりします(笑)。

そもそも贈与の捉え方がモースとバタイユとでは異なる。モースは、贈与する義務、受け取る義務、返礼する義務からなる回路を重視し、さらにこの回路を宗教、政治、芸術等、社会の様々な面に関わる「全体的社会事象」と捉えた。バタイユは「全体的社会事象」の見方を支持しつつも、さらにそれを支配する人間心理として「鷹揚さ」つまり打算、利益、見返りを考えない消費肯定の精神をモース以上に強調する。そして贈与という行為についても、バタイユは実のところ、義務の回路が成り立たなくなるほどの全面的な贈与、破滅的な自己消失を欲している。物的なやりとりがもはや消滅してしまい、代わって非物質的な情念の交流が起きるのを期待しているのだ。あまりにも贈与しすぎたために個(あるいは集団)としての体制が壊れ、それを見る者も、恐怖に脅えつつなぜか自己を滅ぼして、相手と生命の渦を作り出してゆく。バタイユは、贈与をこのような非物質的で不定形で無構造的な融合状態へ開かせようとした。
(『バタイユ―魅惑する思想』より)