月刊『創』プレゼンツ「激論!イラク−日本−北朝鮮 メディアが伝えない真実」参加

ロフトプラスワンで開催された『創』トークライブに参加。このイベントには昨年も参加*1。司会は月刊『創』編集長の篠田博之氏。トークのテーマはイラク情勢および北朝鮮拉致報道を主題にしての「日本のナショナリズムについて」だったが、テーマどおり進まないのがロフト・プラス・ワン。実際は前半はイラクについての話になるも、後半は途中登場した元『話の特集』編集長・矢崎泰久氏の独演会となってしまった。北朝鮮問題は一切触れられず。
前日にチャットを朝4:00まで楽しんでしまい眠気に襲われたのと、個人的にあまり面白くなかったので途中退出した。
前半の綿井健陽氏(アジアプレス)、安田純平氏(ジャーナリスト)、森達也氏(映画監督/TVディレクター)のコメントを中心にまとめてみようと思います。鈴木邦男氏もおられたが余り発言はなかった。辛淑玉氏が後半から途中参加だったが、僕は途中退出したのでお話は伺えなかった(帰りに階段ですれ違った)。

安田純平氏は髭を剃っており髪型も変わっていたので最初見たとき誰だかわからなかった。
イラクから強制送還されてから、市民団体からの講演依頼が絶えず、髭がないと来場者が納得しないので(笑)ずっと髭が剃れなかったらしい。
・今は髭をそって髪型を変えたので、道を歩いても誰も気付かないとのこと。

森達也氏は先日の姜尚中氏とのトークのときも言っていたが、フジテレビの深夜枠のドキュメンタリー番組「ノンフィックス」で天皇制をテーマにドキュメンタリーを作成するとのこと。3月ごろに放送予定らしい。
・なんと天皇本人にインタビューを要請しているらしい!

綿井健陽氏によると、ここ2〜3ヶ月でイラクで取材しているフリーランスの記者はほとんどいないとのこと。大手メディアは簡単にビザがおりるが、フリーのジャーナリストはビザを申請してもおりないとのこと。
・今バグダットにいるのはNHKだけ。「NHKだけがバグダットにいる」と海老沢会長が自慢できるため海老沢会長の延命工作という噂もあるらしい(笑)。
NHKのみならず外国のメディアも実際取材をしているのはイラク人で、外国人記者はホテルにいるとのこと。外国人といっしょにいる、または関係があると思われるだけでそのイラク人も危険だとのこと。
・4月の日本人人質事件が起こった頃はバグダット市内は平和だったが、今は外国人が市内を歩くのはかなり危険でホテルにいるしかないとのこと。
NGOも日本に関係があると思われるだけで危険なので、援助物資はどこの国から来たのかわからなくするとのこと。
・7月の主権委譲後、警備をイラク人治安部隊に任せるようになってから、アメリカ軍の押さえが効かなくなってきたとのこと。
・10月に殺害された香田さんはカメラマン志望で、アメリカ軍に従軍取材の申請を出したり、アジアプレスにも記者証を申請したりしていたとのこと。
・今のイラクは、ボスニアコソボですら戦闘に巻き込まれて死ぬことはあったが、外国人が殺害されたり人質にとられたりとこれまでにない次元の違う状況にあるとのこと。
・今恐ろしいのは中東にいる日本人が狙われることらしい。イラクである必要はないとのこと。

森達也氏が「イラクの人々の対日観が変わってきているか?」と質問。
・綿井氏によると、全般的には日本への憎悪などはまだ感じられないが、これまでならいなかったであろう日本への憎悪を語る人を一人二人程度ではあるが見かけるようになったとのこと。ほとんどは「なぜアメリカに従って軍隊を派遣しているのか」という問いであるとのこと。
・逆にサマワで日本や自衛隊の悪口を言われたことがないとのこと。サマワの人々は自衛隊のあとに企業が来ることを望んでいるため、自衛隊が撤退したら支援が来なくなるのではと考えているとのこと。
自衛隊が活動していない地域の人々の方が日本人に対して、アメリカにくっついているということで少しずつ不信感を持ち始めているとのこと。
・最近自民党の幹事長等が視察で「子供が手を振ってくれた」と語っていたが、米軍が来ても何が来ても子供はもの珍しいので手を振るとのこと。5時間の駐留で、どのメディアにも取材を許可しなかったらしい。

イラクには対アメリカに金で雇われた傭兵が世界中から来ているとのこと。民間の傭兵会社があり志願者はほとんどはスーダンソマリアなどアフリカ系の貧民で、それもなかなか日本では報道されないとのこと。傭兵は少なくとも2万人はいるとのこと(イギリス軍が1万人くらい)。
NHKはバグダット市内から空港までイギリスの民間軍事警備会社に片道2000ドルで守ってもらっているとのこと。
サマワの宿営地を出入りするトラック運転手はソマリア人だったりするが、自衛隊の隊長たちは「我らが雇っているイラク人たちが雇っているので誰だか知らない」と発言していたとのこと。

綿井健陽氏がイラクで取材したVTRをまとめたものが映画『Little Birds イラク 戦火の家族たち』として05年5月に新宿K'sシネマで公開されるとのこと。大阪・名古屋でも順次上映とのこと。
・会場で予告編1と2が流された。会場では「イラクにも日本同じで子供の笑顔があるのに戦争が・・・」といったストーリー仕立ての2の方が評判がよかったが、僕は普通に戦争映像をまとめていた1の方がいいと思った。
・日本では20代以下の人々が悲惨な映像を見たくないという人が多いらしく、日常的な光景から入ってもらわないと悲惨さに目を向けてくれないとのこと。だから予告編2で導入として子供たちの笑顔を使用したとのこと。
森達也氏は非常勤講師をしている和光大学で、この映画の前身となる綿井氏の1時間のドキュメンタリー番組を生徒に見せたとのこと。泣き崩れる生徒もいたらしい。
・一切BGMやナレーションはなく、現場ノイズだけしか音がしないが、凄まじいまでの臨場感であるとのこと。
・綿井氏の映像はニュース・ステーション等で使われた映像が多いらしいが、いかに普段日本で流れている映像がBGMやナレーションや効果音等の製音で戦争が矮小化され無害なものになっているかがわかるとのこと。

*1:ロフトプラスワン『豪華3本立てで2003年を振り返る!』:http://d.hatena.ne.jp/kwkt/20031226