アジアカップ2004CHINA・準決勝 日本対バーレーン

勝負は3点目をどちらが後で取ったかでほぼ決まった。
それにしてもサッカーとはつくづく心理が大きく影響するスポーツだと思う。バーレーンはアジアの格上・日本に対して先制。しかも前半のうちに相手の一人が退場。ほっとするなというほうが無理だ。案の定、後半10人の日本が逆襲。同点のセットプレーもすばらしかったが、玉田選手の2点目は日本選手にはめったにみられない強引なすばらしいシュートだった。
しかしまだバーレーンにも時間が残っていた。守りに入った日本に逆襲。同点・逆転と立て続けに得点を奪う。僕はこれで勝負あったと思った。もう日本は心理的に盛り返せないのではないかと。しかし試合終了直前の中澤選手の同点ヘディングゴール。これでバーレーンディフェンダーは完全に足が止まった。
延長戦はすでに前線のFWと最終ラインが大きく間延びした草サッカー状態。完全に足が止まっているバーレーンディフェンスをかいくぐり玉田選手が決勝点。その後日本がなんとか逃げ切り、2試合連続の延長の激戦を制した。
確かに凄い試合だった。玉田選手の2点目と中澤選手の3点目は非常に素晴らしかったと思う。歴史に残る試合なのかもしれない。でも。やはり「でも」が出てくる。この試合は退場という予想外の偶発的な出来事が起こったため、3人枠をフルに使った選手交代がなされた。交代した中田(浩)選手、小笠原選手、西選手は走り回って大活躍だった。これを見るにつけてもメンバー固定の弊害が出ていたとしか思えない。ジーコ監督が大会を通じてある程度選手をローテーションしていれば(それで別に実力が落ちることはないと思う)ここ2試合は延長戦を戦わなくて済んだ気がしてならない。ジーコには先発メンバーを信頼しある程度固定するという「哲学」はあるが、先発選手のローテーションや効果的な選手交代などを行うことでチーム全体をいいコンディションへもっていく、先手を打ってリスクをヘッジするという「マネジメント」の発想がないように思えてならない。
次はとうとう最後の決勝戦。結果よければすべてよしかもしれないが、今大会を見ていてもジーコ監督の選手起用に不信感が増すばかり。劇的勝利にもかかわらず。
日本 4-3 バーレーン
http://www.sponichi.co.jp/soccer/japan/full/asia/2004/result/0803/01.html

 劇的な勝利によって得られる感動と成果について、あえて意義を唱えることほど愚かな行為はないのは分かっている。だが、これほどまでに選手たちを極限まで追い込み、とことん疲弊させ、特定の選手による「個の輝き」と緊急避難的な「自主性」にすべてを委ねてしまうチーム作りに対して、どうしても私は諸手を挙げて賛同することができない。

 もちろん私としては、ここまで全力に戦ってきた選手に対しては、このまま優勝してほしいという気持ちでいっぱいである。決勝の相手が中国であればなおさらだ。だがしかし、今大会におけるジーコの「無為自然」が引き起こした選手の酷使については、やはり強い抵抗を覚えずにはいられない。ゆえに、たとえ連覇が達成されたとしても、私はさらなるアンビバレンツな思いを抱えながら、今後の代表の戦いを見守ることになりそうだ。