姜尚中氏講義「東北アジアの中の日本」参加
朝日カルチャーセンターで行われた姜尚中氏の講義「東北アジアの中の日本」に参加してきました。会場には150人ほどでびっしり。開始10分前に到着したら運良く一番前の席が空いていたので座ったのですが、最前列はほとんど女性。っていうか会場の6〜7割方が女性。場所柄もあるのかもしれませんが、姜先生はやはり女性に大人気のようです。
※要注:以下のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。
内容は、最初に靖国問題を端緒として、その後グローバル化に対応するための東アジア共同体の必要性、六カ国協議の重要性と展望などについて話されました。
これまでいろいろな方から何度も「過剰流動性をくいとめるための地域主義が重要」という話を聞いてきましたが、まだまだ根本がよくわかっていなかったように思います。次の東アジア共同体の話は目から鱗でした(っていうか僕の無知・不勉強の証でもありますが・・・)。
- まず東アジア共同体構築の前提となる現在の状況について解説いただきました。
- 直接的な発端は97年のタイ・韓国での金融危機。
- アメリカのグローバリズムは金融を梃子にして世界中のマーケットで利益を得ようとする。
- どの国も自由貿易のために門戸を開き、そのため外国資本が自由に進出し過剰な金融資本の流動性が発生。ヘッジファンドが短期の利鞘を儲けるために一気に撤収するとその国の社会の蓄積が一気に根こそぎになる。金融経済が実体経済・社会を破壊する事態が発生。
- 中南米はアジア以前にすでに金融危機の洗礼を受けたのでほぼすべてが反米政権。
- 一国家でグローバル経済に対応しようとすると、労働市場が流動化し失業率が高く貧困層が多くなるのに景気がいいという状況が起き、多数の生存ぎりぎりの所得しか得られない人とごく少数の通常では数十年かけても得られない富を短期で獲得する人が現れ、国内に「二つの国民(富裕層と下流層)」が登場。
- 国民統合が成り立たなくなるため、共同体的統合(同じ日本人)という手法と階層社会的統合(下層は逸脱しない限り放置)という暴力的な手法が使われる。人々を分裂させるネオリベラリズム的手法をとりながら、分裂するがゆえに国民主義的・共同体主義的ナショナリズムが勃興。
- 国家は世話をしないので自由市場の中ですべて自己責任で自由にやれという「国家の退場」と国民統合・社会秩序の維持・セキュリティ対応のための「国家の過剰」が同時に発生。
- 不安と将来の生活水準の向上の展望を描くことができない人々が、自分たちの存在基盤取り崩す「墓堀り」を行うような政策を実行する政治家を支持するという倒錯した現象が起こる。
- 一国でグローバリズムに対処し国民統合を実現しようとすると、かなり権力集中的な独裁に近い体制が必要になる。自民党の政党体質の変化はそれに対応。
- だから東アジア共同体を構築する意義は以下の通りになるとのこと。
- 東アジア共同体とは、グローバル経済のリスクに備えるのは一国単位では難しいので、近隣の国々で共同に対応して行こうというセーフティネット。
- 東アジア各国の域内同士の貿易収支は50%を超えており*2今後も向上すると予想されており地域内の貿易・投資は自律している。しかしすべての為替リスクはドルによって支配されている。東アジアの国々はアメリカの国債を大量に買い、大量のドルの外貨準備高をリスク回避のため保持している。
- 現在は通貨危機の際にはバスケット方式で該当国の通貨を優遇し相互援助を行う。将来的には域内共通通貨を作ろうという動きがある。これは為替で一国の経済が左右されるリスクを低減させるだけでなく域内での富が循環させ生活水準を向上させることができる。
- 日本が経済大国なのに生活が豊かに感じられないのはなぜか、企業の利益はすべて社会に還流されているのか、そうなっていない状況は日本も韓国も中国も東南アジアも各国共通。東アジア共同体はドルに依存した為替制度を少しづつ変更しながらバスケット方式から地域共通通貨へと向う途。
国内の状況と外交問題がここまでリンクするのか!と刮目させられました。今の社会にまだ余裕があるうちに自分たちの足場を築けるかという問題だと思いました。簡単に煽られて反中・反韓・反朝で噴き上がっている場合ではありませんぞ!
※要注:以上のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。
- 朝日カルチャーセンター
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/index.html
英霊慰霊顕彰勉強会「靖國神社問題をどう解決するか」 参加決定
「発見 日本美術」辻惟雄×山下裕二対談 参加予約
日本美術も学んでみようと思います。何も知らないに等しいので学び甲斐があります。見田先生の講義*1のときによくわかりましたが、スライドで画を見ながら解説していただけると非常にわかりやすいです。
「発見 日本美術」
『日本美術の歴史』(東京大学出版会)刊行記念
辻惟雄×山下裕二 対談
■2006年2月5日(日)18:00〜20:00(17:30開場)
■会場:青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
■定員:120名
日本美術史研究の第一人者・辻惟雄氏と山下裕二氏の師弟対談。“私ならこれを選びます”スライド上映。
- 辻惟雄
1932年生まれ。東京大学名誉教授・MIHO MUSEUM 館長。『奇想の系譜』(1970年、2004年ちくま学芸文庫)によって、若冲・蕭白らを「発見」し、従来の日本美術史とは違う日本美術の流れを提示。さらに日本美術の特質を「アニミズム」「あそび」「かざり」に求める。『奇想の図譜』(ちくま学芸文庫)、『日本美術の見方』(岩波書店)、『日本美術の発見者たち』(共著、小会)など著書多数。- 山下裕二
1958年生まれ。明治学院大学教授。著書に『室町絵画の残像』(中央公論美術出版)、『岡本太郎宣言』(平凡社)、『日本美術の20世紀』(晶文社)ほか。赤瀬川原平氏との共著に『日本美術応援団』シリーズ(5点)がある。