蓮實重彦とことん日本映画を語るVOL.16『女性と金銭―溝口健二の系譜をたどる』参加

青山ブックセンターで開催された蓮實重彦氏による恒例イベント・蓮實重彦とことん日本映画を語るのVOL.16『女性と金銭―溝口健二の系譜をたどる』に行ってきました。
今回のテーマは日本映画における「女性と金銭」について。過去の日本映画において「女性」と「金銭」とが交換される場面では、当事者の男性と女性が描かれることは少なく、多くの場合男性は不可視の領域に姿を消しており、具体的な金銭のやりとり・問題が起こるのは女性二人の間だとのこと。女性の間にも擬似家族的な階層があり、「ねえさん」「おかあさん」と呼ばれる金銭の流れを管理できる(もちろん背後に男性がいる)女性と劣勢に立たされる女性という対比的な関係が描かれているとのこと。溝口健二監督は「男性中心社会における虐げられた女性」を描いた監督とよく言われるそうなのですが、背後に男性中心社会があるとしてもその間に存在する「ねえさん」「おかあさん」の世界を丹念に描いているそうです。
最近これらの関係は映画で描かれることはほとんどなく、それは「ねえさん」「おかあさん」役に相応しい女優がもういないからとのことで、各作品を上映しながらのトークが進んでいきました。

「芸者」以外に映画で描かれているものとして「酌婦(酒のお酌が目的ではない)」「小料理屋(食事が真の目的ではない)」「お茶屋(喫茶が真の目的ではない)」「矢場(矢を的に当てる娯楽が真の目的ではない)」などが登場している作品のシーンが紹介・解説されました。

その他に海外で芸者が描かれている珍品2作、戦後から売春防止法成立までの風景が描かれている作品が紹介されました。

また先日亡くなった田中登監督の追悼の意味を込めて以下の作品が紹介されました。

『実録 阿部定』のラストシーンが紹介されたのですが、流れる歌はかなり衝撃的。またまた蓮實先生曰く田中登監督の作品をひとつも観たこともない者は非国民と呼ばれてもしかたがない」とのことで(僕は毎度非国民)観るようにとのことでした。
今回紹介された「溝口的なもの」を最も見事に実現している監督して侯孝賢監督が挙げられ遊郭を描いた『フラワーズ・オブ・シャンハイ』が紹介されました。同監督の『悲情城市』を観てない者は「足払いを食らわしてやりたい」とも仰っておりました(笑)。


トーク冒頭に話されていたのですが、蓮實先生はクリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』を試写で、多少の紆余曲折があって、鑑賞されたそうなのですが、『ミリオンダラー・ベイビー』が比較にならないほどスバラシイとのことです。

さらに詳しいレポは以下の方のものを参照ください。