ジェンキンス氏はなぜ甥と会えないのか

今週のまる激トークオンディマンドでもテーマになっていたけど、ジェンキンス氏の甥子さんがアメリカからわざわざ東京にジェンキンス氏に会いに来ているが、日本政府から本人との面会を拒否されているとのこと。
ロイター 20040725:ジェンキンスさんのおい、「日本側から面会を拒否されている」
このニュースが何を意味しているかはまず以下のことを知っていなければならない。日本ではほとんど報道されていない。ネットで検索しても中日新聞の5/21付けのニュースでしか報じられていない。
中日新聞 20040521:「脱走兵の証拠ない」 ジェンキンス氏のおいが述べる 国防総省「手紙ない」と回答

 【ワシントン=豊田洋一】拉致被害者曽我ひとみさん(45)の夫の元米兵チャールズ・ジェンキンス氏(64)のおいで、米ノースカロライナ州に住むジェームズ・ハイマン氏(42)が20日、本紙の電話取材に応じ、「おじが脱走兵だという証拠を米政府は持っていない」と述べ、ジェンキンス氏が北朝鮮から日本に出国しても、米政府は脱走罪で起訴すべきでないと強調した。
 ジェンキンス氏は在韓米軍に配属されていた1965年、北朝鮮との間の非武装地帯で姿を消した。米軍は兵舎に残されていたという母親あての置き手紙を、脱走の根拠にしてきた。
 しかし、ハイマン氏が情報公開請求により、その手紙の開示を求めたところ、昨年3月に「国防総省からそのような手紙は存在しないと回答があった」という。(続く)

つまりジェンキンス氏が訴追されて有罪になるための証拠はすでになくなっていて、でももちろんそのことは当人は知る由もなく、にもかかわらず司法取引の処理は進んでいるのだ。つまり日本政府はジェンキンス氏に有罪を認めさせ司法取引ののち日本で家族一緒に、というストーリーをどうしても崩したくないようだ。本人や家族の名誉は関係なく。じゃあ今報道されている歓迎・祝福ムードや今後の顛末の心配であふれているメディア報道とはいったい何なんだろう、と思わされずにはいられない。以下のサイトがかなり参考になりました。
⇒ Letter from Yochomachi
20040724:Le Monde/Japan Times: 日本政府はジェンキンスさんとその甥との面会を拒否している、なぜ?

日本政府としては家族の名誉とかそんなことはどうでもよくて、ジェンキンスさんに有罪を認めさせ司法取引でうやむやに処理してしまおうという腹だから、家族に会わせてジェンキンスさんに余計な知恵を吹き込まれては困ると言うところだろう。こういうところにも小泉内閣の「メロドラマ演出第一主義」が窺える。ジェンキンスさんにも家族がいる。その家族との面会をさせないで、またジェンキンスさんに有罪を認めよと迫って、日本は人道主義国家だと言うのだからあきれたものだ。

20040725:日経:ジェンキンスさんのおいが会見、面会拒否を批判

司法取引とは有罪を認めることではじめて可能となる。罰を受けなくても有罪は有罪であり、ジェンキンスさんとそのアメリカの家族にとっては、子孫代々に渡る大きな不名誉。だから家族は何十年にわたり無実を主張してきたわけで(証拠として米軍が家族に提示したというジェンキンスさんの書き置きのタイプ打ちコピーは、署名が間違っていたとかどうもいい加減なものだったらしい)、ジェンキンスさんが監獄に入らないからと言って納得するものではない。
これでは小泉版「拉致」じゃないか。