蓮實重彦とことん日本映画を語るVOL.15「溝口健二を/と愛すること」参加

青山ブックセンターの3ヶ月に一度の恒例の蓮實重彦氏による映画トーク蓮實重彦とことん日本映画を語る」の第15回目「溝口健二を/と愛すること」に行ってきました。
成瀬巳喜男監督は世界一だけれど「世界一」は何人もいて当然溝口健二監督も世界一とのことで、今回はすべて溝口監督の作品が紹介されました。蓮實先生が会場に来ている人々に問いかけます。「この中で溝口作品を10本以上観たことのある方はどれくらいいらっしゃいますか?」と。手を挙げる人は極少数。ちょっと悲しそうな蓮實先生。そして蓮實先生曰く、「溝口作品を10本以上観ていない者は(自分を)愛国者と唱えてはならない」そうですw 溝口作品を観ていなくて何が愛国者かw と仰っておりました。
溝口健二監督が撮った映画は90数本あるそうですが今見ることの出来る作品は30数本程度とのこと。今回はその限られた作品の中から垣間見えるという溝口健二監督作品の(蓮實先生の)イメージがテーマ。それは「水」と「船」。蓮實先生の映画の見方は「一連の作品の中で偏執的に絶対繰り返されている『同じもの』」を示すことだそうで、今回は溝口監督の作品の中で繰り返し登場する「水」と「船」のシーンが紹介され語られました。


男女・親子関係における別離や諦念を示す方法として水辺と船のシーンが使われている例。

溝口監督は水辺の船の滑走する運動を繰り返し好んで撮る監督であるそうです。

以下は溝口監督の作品内では登場人物の生死にかかわることも水辺の船の上で描かれるという代表例。

配布資料より抜粋

―そして船は行く―
いま溝口健二を論じることは、見ることのできない作品に対しても有効な視点の設定が不可欠なものとなる。「そして船は行く」として溝口にアプローチする私は、五十本を超える失われた作品の多くの重要な場面に「船」が描かれていると確信している。


没後50年ということで溝口作品を観れる機会がこれからでてくるそうで、蓮實先生曰く、『残菊物語』は観なければ非国民だそうですw(最低でも『残菊物語』と『近松物語』は観てほしいとのこと)。僕もこの蓮實先生トークで紹介されたシーン以外観たことがないので機会があれば観てみようと思います。


没後50年を記念して溝口健二監督関連のWebサイトが立ち上がっており、シンポジウムや映画上映が企画されているようです。我こそは愛国者たらんと志す方はぜひご参加くださいw

追記:2006-07-23

内田樹『私家版・ユダヤ文化論』購入

私家版・ユダヤ文化論渋谷に行ったので渋谷ブックファーストで立ち読みしていると、内田樹氏の『私家版・ユダヤ文化論』を発見。先日のユダの福音書の講演*1の内容とも関連がありそうな気がして面白そうだったので購入。