思想塾公開トークセッション『若者の現在』参加

検証・若者の変貌―失われた10年の後に三省堂で開催された宮台真司氏の思想塾の公開トークセッション『若者の現在』に行ってきました。思想塾の公開イベントは今後3ヶ月に一度(7月・10月・1月)に行われるそうです。今回は宮台真司氏、藤井誠二氏、浅野智彦氏、鈴木弘輝氏、堀内進之介氏の5人で『若者の現在』というタイトルで3時間近くの議論が行われました。


以下は語られたことのある程度のまとめでです(僕のメモなので抜けているものもたくさんあります)。

―前半―

  • フランスのデモの背景と日本の若者言説の背景の対比
  • 若者イメージや若者論を受容する社会の側の変化
    • 70年代の若者論も今の若者論も趣旨はあまり変わっていない
    • 70〜80年代の若者論は若者文化にある種の理想を託していた(必ずしも若者バッシングではなかった)
    • 90年代からは若者バッシングと若者が統計上昔からあまり変化してないことが平行して語られている(若者バッシングにヘゲモニーが移る)
  • 他者(若者)の行動の「不透明性」と社会の「不安」
  • 少年犯罪の重罰化と修復的司法
  • 共同体的温情主義を忘れられない人々が不安を埋め合わせるため少年犯罪の重罰化を主張している矛盾

―後半―

  • 若者に対して上の世代が「不安」「不透明さ」を感じる要因
    • コンテキストの切替能力の高度化(状況志向)
    • 外部(行動)からの内面(人格)の推測不可能性
  • 「所属」から解放された時代の前提の不透明性
    • 若者:特定の所属への所属感情のなさと様々な状況における前提表明の必要性
    • 年長世代:所属感情のなさは反社会的、所属できないことはケアの対象と考える
    • 特定の所属へのフル・コミットメントの危険性とリスク回避(現在強いられている環境への適応行動)
    • 社会環境を放置しておいての若者批判の不当性
  • 典型家族と変形家族
    • MIYADAI.com 戦後家族の空洞化への処方箋
      http://www.miyadai.com/index.php?itemid=151
    • 典型家族の機能不全と機能的等価な再帰的な変形家族
    • 日本においては変形家族が典型家族と外面的に違うことをもって批判・偏見が存在
    • 感情的安全確保のための、所属からの解放(第四空間論)から再帰的な変形家族への(宮台氏の)認識転換
    • MIYADAI.com 「素朴に家族を生きる」のが不可能な今日。共犯集団的な「近親姦家族」に向かうか。全てを演技に取替えた「レンタル家族」に向かうか。映画『紀子の食卓』に答えを見る。
      http://www.miyadai.com/index.php?itemid=341

誤謬があるかもしれませんが、僕の感想です。
「まったり革命および第四空間」論から「再帰的な家族・変形家族」論へという宮台氏の認識転換と、浅野氏が語られた「若者への理想の仮託」から「若者バッシング」へという若者論の転換点は時期がほぼ符合している点(内容は全く違うわけですが)が興味深かったです。宮台氏の「まったり革命」は70年代から続く「(桎梏としての)所属からの解放」の言説の転換点における総仕上げ的な意味をもったのではないでしょうか。当時は「宮台の言説は社会を解体させる」という言説をよく見かけたものです。個人の「感情的安全」を確保という目的のための「(桎梏としての)所属からの解放」か「再帰的な関係性」構築かという宮台氏の手段の違いが再認識できました。「(戦後の一時期に形成された「伝統的な」)典型家族」の外見的形態を保っていることこそが「まとも」なのだという立場からすれば、どちらも社会を解体させる言説に聞こえるのかもしれません。


さらに誤謬があるかもしれませんが、書いてみます。
トークの中で、いわゆる初期(?)の宮台氏の言説(「まったり革命」および第四空間論)に近い考え方を浅野氏は基本的に肯定されていたように思うのですが、双風舎『限界の思考』において北田暁大氏もそこに可能性を見出されていたのを思い出しました。「再帰性」さらにいえば「敢えて」の可能性と危険性については『限界の思考』で宮台・北田両氏によって語られていると思うのですが、この立場の違いは(個人の自由を考えるときの)単なる立ち位置の違いなのか、それ以上の何か決定的な違いがあるのか、とまた思ったりしました。

追記:2006-04-26

松浦さんの「不機嫌な日常」にて当日の様子の写真を見ることができます。

追記:2006-04-28

id:seijotcpさんが前半部分の詳細なレポを掲載されてます。

松浦さんとお会いしました

思想塾公開イベントに来場されていた「不機嫌な日常」の松浦さんと初めてお会いしました*1。会場に来ていた友人・知人数名とともに松浦さんと渋谷でお食事。大変楽しいひとときを過ごせました。集まられた皆さん、ありがとうございました。

*1:正確には以前参加した某講演会でお見かけしていました。

KawakitaのBookmark(2006/04/17-23)