突破者・宮崎学の実弾トークライブ2発目『近代の奈落』を語る!差別の歴史と現代社会 参加

近代の奈落姜尚中の政治学入門
 ロフトプラスワン姜尚中氏初登場とのことで、こりゃザンギョウなんてしてる場合じゃないということで仕事もそこそこに、新宿ロフトプラスワンで開催された突破者・宮崎学の実弾トークライブ「『近代の奈落』を語る!差別の歴史と現代社会」に行って参りました。ホストに宮崎学氏、ゲストに姜尚中氏、進行役に永江朗氏。
姜氏は宮崎氏の著作『近代の奈落』の文庫版の解説を書かれ、宮崎氏が大変感激したとのこと。会場で本編の一部と姜氏の解説部分のコピーが配布されたので読ませていただいたのですが、僕も感動してしまいました。立ち読みでもいいからみなさん読みましょう。


※要注:以下のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。


『近代の奈落』を書いている過程で気づいたこととして、宮崎氏は「差別」を考えるにあたって基本的に以下の様に考えているとのこと。

  • 被差別部落の解放運動の特徴は、差別の原因を社会システムや支配の構造として、差別が被支配者を押さえ込むのに便利で有効な方法だから存在するという歴史観
  • しかし実際の差別の構造を調べてみると賎民がもっと弱い賎民を差別する構図が成立していることが多い。
  • 差別があれば差別と徹底して戦うしかない。被差別の中でどう相互扶助を成立させていくのかという観点が必要。
  • 人権が行き届けば差別がなくなるという話があるがそのような社会は来ないだろう。人権重視の主張から被差別を受けている者たちの途が開けることはないと考えている。人権は結局支配の論理に包摂されてしまう可能性がある。
  • 差別の問題では、反差別の運動はありえても人権確立の運動はありえない。草叢(くさむら)・自らの根拠地、もといた場所に戻って見直していくことが重要。

姜尚中氏は日本の差別構造の変遷と現代の状況を語られていました。

  • 日本は基本的に被差別側を抱き込む戦略。抱き込まれないごく少数は潰すか排除する。社会的に抱き込みをしつつ差別するという構造。
  • 現在行われている「改革」が進んでいくと、被差別者が「分相応」に生きても生きられなくなる。日本で初めて「分相応」に生きても生きられない時代になっているのでは。
  • 一部には一挙に巨万の富を得る人が出てくる可能性もある。マイノリティの中でも分裂が起こるのでは。
  • 現在、民族・宗教・性別などの差異を超えられる原理は「資本」。どこの誰であれ資本には関係ない。「資本」が一方では反差別的なネットワークやメディアを作り出し、一方では利潤を生み出し見えない搾取を生み出す両面性がある。資本を全面肯定できないが、資本ほどラディカルなものもない。
  • 実際的な差別の種類としてとしては以下の2種類がある。
    • 精神が崩壊しているとして人間の埒外におかれる差別(国家が判定する科学の下の差別)
    • 被差別部落民、在日朝鮮人は医学的鑑定の結果の差別ではない(想像の世界での差別)
  • 被差別部落や在日のコミュニティを知らずに想像で差別し、メディアがそれを増幅。実際の差別体験なしにイメージで差別的言説が流通。

お二人の基本的スタンスとして以下のことが挙げられました。

  • 代表して/されての運動よりも自分で自分を代表する。
  • 代理行為は、最終的には党の論理による支配・抑圧に転化しがち。
  • 個人・共同体が自由を獲得することが必要。
  • 全体社会の中で個別社会*1が機能すれば違った展開がありえる。

「自立」という意味で、とても重要な指摘だと思いました。


からゆきさん おキクの生涯被差別部落民が天皇を慕ったのをどう考えればよいかということで、宮崎氏の紹介で『からゆきさん おキクの生涯』の執筆者・大場昇氏が登場。大場氏は「からゆきさん(海外の日本人売春婦)」を取材。被差別部落に生まれ、「からゆきさん」としてマレーシアへ渡ったおキクさんの生涯の紹介と「からゆきさん」と呼ばれた女性たちについて解説していただきました。これついては、驚きの事実ばかりでした。

  • 「からゆきさん」の出自は被差別部落、その女性たちが南方(マレーシア、シンガポールなど)に行って売春をするという過酷な生活を強いられた。
  • 「からゆきさん」は売られたり騙されたりして南方に送り込まれた。その数、30万人。
  • 15〜16歳で送られて20代でほとんど死去。
  • 日本人留学者たちの記録では、彼女たちは微塵も暗さがなく(その境遇から考えれば)不思議なほど朗らかで明るい、と記述されている。
  • 日露戦争時には日本軍はバルチック艦隊がどこを航行しているか所在がつかめなかったが、海外の「からゆきさん」がバルチック艦隊の所在を日本に電報して伝えていた。お国が危ういということで、自分の稼ぎを使ってくれと領事館に寄付。
  • 海外における「謙虚で優しい日本女性」のイメージは「からゆきさん」によって形成された。
  • 天皇の普遍性がすべてを均してくれる(天皇の前の平等)、最も虐げられた者こそ人知を超えた力に救われる、という救済思想があったのではないか。

天皇と被差別者の問題については、僕の好きな小説家(故)隆慶一郎氏が小説の中で非定住民を描くとき、常に直接・間接に天皇との繋がりを意識されていたのを思い出しました。日本社会を読み解く大きな問いであると思います。


※要注:以上のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。

宮崎学氏のサイトで当イベントの発言録が公開されています

*1:中間集団?

公開討論会「こうするべき!麻原裁判控訴審」の発言録

公開討論会「こうするべき!麻原裁判控訴審」の発言録が公開されています。