靖国神社崇敬奉賛会公開講座・英霊慰霊顕彰勉強会第7回『靖国問題をどう解決するか』参加

―――【お詫び:2006/02/07】――――――――――――――――――――――――――
不覚にもエントリー作成日を間違えてしまいました。
2/4のエントリーにブックマークしてくださった皆様申し訳ございません。

id:seijotcpさま、リンクをはっていただいきましてありがとうございます。
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20060207/p1
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


千代田区九段下の靖国神社の近くにある千代田区公会堂にて行われた靖国神社崇敬奉賛会公開講座・英霊慰霊顕彰勉強会第7回『靖国問題をどう解決するか』に行ってまいりました。当イベントを知ったのは松浦大悟さんのblog「不機嫌な日常」にて。雑誌「正論」や「諸君」で宣伝されていたそうですが、不勉強なためよほどの事がない限り論壇誌までは読まないので貴重な情報でした。

サイゾーのM2の連載で沖縄や保守について小林氏が語っていたこともあり、このような場所でどのようなことを話されるのか気になったので参加してみようと思った次第。


※要注:以下のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。


大まかなプログラムは以下の通り

800人定員で客層は半数近くが30代以下だとのこと。女性も思ったよりもいました。午前中に靖国神社崇敬奉賛会青年部の立ち上げを行ったとのことで、若い人の参加を募っている模様。
聞いていて不快だったのが会場の拍手。連続的で速くて大きい意図的な拍手が、後援者が勇ましい言葉を発するたびに、なされておりました。あと中国・韓国・左翼批判のたびに起こる蔑みの笑い声。変な勇ましさと批判対象への蔑みはむしろその人たちの空虚さを物語っているように感じました。

高森明勅氏講演

内容は(高森氏の立場から見た)靖国問題の内容解説、誤った解決の仕方、正しい解決の仕方。気になったのは「本来の」「真の」「正しい」という言葉の頻出と勇ましい話し方。
高森氏によると靖国神社問題とは以下のように定義できるとのこと。

大東亜戦争の敗戦後、GHQ占領政策により、靖国神社がその創設目的と歴史的沿革に照らして本来受けるべき待遇を受けられなかったことに起因する問題の総体

靖国神社は現在、本来の目的を果たせていない、あるべき状態を満たしていないという状況認識のようで、その根源は

にあるとのこと。現状の問題として

  • 憲法第20条の解釈の問題
    • 第二項で「宗教上の行為、祝典、儀式又は行事」は禁止していないので靖国参拝は禁止されていない。
    • 第三項で禁じている「宗教的活動」は援助・宣伝・弾圧・・・などの積極的行動のこと。
    • 歴代総理大臣靖国参拝をして問題となっていなかったが、50年8月15日に三木武夫首相が参拝したときにマスコミの目が集まり目立ったので騒がれた。
    • 靖国神社への憎悪が原因であり自発的なものではなく占領下のマインドコントロールの結果だとのこと。
  • 外圧問題
    • 中国・韓国は昭和60年の中曽根首相が参拝するまで靖国参拝を問題としていなかった。
    • 日本に外圧をかけるのはそれが効果があるからとのことで、高森氏が中曽根氏を批判、会場拍手。
    • 真の敵は中韓のみならずそれに呼応する国内の勢力、とのこと。
  • 歴史認識問題
    • 近代の日本の歩みは一方的なアジアの民衆に対する侵略と加害の歴史であったという捻じ曲がった歴史認識、とのこと。
    • 東京裁判史観とGHQの政策によって歴史認識が歪められてきた、とのこと。
    • 歴史認識を正さなければ問題は根本解決しない。歴史認識の歪みは徐々に日本の社会に浸透してきた、らしいです。

ということを挙げられておりました。
そして靖国問題の解決方法として

  • (高森氏の思う)間違った解決方法
    • A級戦犯分祀
      • 中国はB・C級戦犯も問題だと言ってきているので最終的には靖国を否定するとしか考えられないとのこと。
      • 政府は毎年8月15日に全国戦没者追悼式典を実施しているがその対象はA・B・C級戦犯も含むがなぜ靖国だけが問題なのかわからない。
    • 国立追悼施設
      • 中国韓国がここまで言ってくるのであれば追悼施設は作れない。
      • 言わなくなったら作ってもいいが、言わないのならば作る必要はない。
      • 靖国で会おうと言って死んだ死者の約束を反故にしてはならない。
  • (高森氏の思う)正しい解決策
    • 靖国神社の公的復権
    • 国家機関が靖国神社に関与する
      • 今後100年どこかで日本も戦争に関わるかもしれない、戦死者が出たときに現在の防衛庁の追悼施設で大丈夫か、靖国神社が御霊を引き受けるべきではないか。
      • 公的追悼施設もそのための準備ともいえるとのこと。

時間的・空間的などこかに仮想敵がおり、それが我々が本来あるべき姿になるのを妨げている、我々もそれを克服しなければならないという議論でした。「だれよりも靖国神社の参拝を願われているのは陛下ご自身であろうと拝察する。」という言葉を聞いたときに、頭の中に「田吾作による天皇利用」という言葉が思い浮かびました。

小林よしのり氏講演

産経新聞・諸君・正論でいうお約束的なことを言うつもりはない」とのことで、小泉ネオリベ路線批判からの国家共同体の護持ということを仰っていたように思います。

  • 大衆はテレビやマスコミに影響されやすい、庶民はクニの歴史や常識・慣習を自分たちの家族に伝えていく自分の感覚を信じる人たち
    • (会場大拍手・・・恐らく拍手している人の念頭にあるのは大衆=朝日・左翼、庶民=自分たちという図式だと思います。)
  • イデオロギーになってはならない、思想しなければならない
    • (会場大拍手・・・僕にはその強烈な拍手をしている人たちが後者だとは思えない)
  • 小泉氏は保守か?東京裁判史観に影響を受けていないか
    • 小泉氏の発言:「心ならずも戦場に赴き、亡くなられた方への哀悼の誠を捧げ、不戦の誓いをする」
    • 靖国問題アジア諸国から非難があったときは村山談話を繰り返している。
    • A級戦犯戦争犯罪人だと認識していると言っている。参拝の方法は反戦平和・私人参拝。
    • このようなことを言ってなぜ参拝するんだと中韓が言うのは当たり前。
  • 政教分離が加速し日本人の本来の観念・国民性が壊されていることに危機感を抱かなければならない。
  • 靖国神社を守る事も大切だが、靖国神社に祀られている英霊の方々は何を守ろうとしたのか。
    • 護ろうとしたクニというのは故郷、自分の親しき人々およびその周りを囲む故郷を守って死にたいと考えた、国家権力を守りたいと言って死んだわけではない、あくまでクニ(故郷)を守るため
    • 個人は周りの環境から作られるものであって、そこから切り離されて形成されるものではない。
    • あらゆる共同体と係わり合いのない分離された個人の能力なのだから勝ち組になればすべてをぶん取っていいというのが今の市場原理主義構造改革
    • 日本の美風を信じて死んでいった人たちはこれをどう思うか。濃密な共同体が存在していなければ特攻隊で死ぬという覚悟は出来ないだろう。
    • 国民の美風・歴史を守ろうという決意がない限り靖国に参拝しても何の解決にもならない。すべての総体で考えていくべき。

「クニ」という個人にとって入れ換え不可能な想像的な範囲を守るために戦ったというのは理解できます。ただなぜ自分を育ててくれた「クニ」と国家が即直結するのか。国家という装置は計算可能な国民益を増大させるための、「クニ」を「人間関係の範囲、自分の生活世界」を護持するためのものではないのか。護るべきは「クニ」であって国家はその手段ではないのか。

繰り返し書いているように、「愛国心」というのは「自国の国益を優先的に配慮する心的態度」のことである。
国益」とは理念的に言えば、国民の生命幸福自由の確保のことであり、リアルに言えば、実効的な法治と通貨の安定のことである。
私たちが国益を優先的に配慮するのは、「そうするほうが私的な利益を最大化できるから」である。

■第三に「ネーションとステイトは違う」ということ。ステイトは「機構としての国家」、ネーションは「国民の共同体(生活や文化を含めた相続財産)」です。近代の国家は「国民国家」と言って、ステイトが、ネーションを守るために存在しています。
・・・
■日本で「愛国心」と言う場合、戦前戦中の国体思想の影響もあって、いまだに魂のふるさとである国家と一体化することを指す傾向があります。これでは政府を批判する国民の振舞いが「非国民」だなど名指されてしまい、国益増進もクソもなくなります。
・・・
■第五に「国益とは、計算可能な国民益だ」ということ。国体思想では、国益とは魂のふるさとである国家の利益のこと。だからこの思想では、国民の大半が死滅しても国益が守られるということが論理的にあり得ます。戦中の「一億総玉砕」思想が、典型例です。
■近代国家では、あるいは近代憲法においては、国民の利益を増進しない国家は許されず、国民の利益と無関係な国家の利益などありえません。近代憲法は思想信条の自由を認めますから国体思想を鼓舞するのも自由ですが、近代国家の何たるかを知らねばなりません。


靖国問題を論じるお二方のお話を聞いていて思ったのは、「クニ」を護ろうとした人々は、国家対国家の戦争に動員された一事をもってして、なぜ国家や(過去国家と一体化していた)靖国神社に独占的に祀られるのか。英霊の本懐を言うならその人たちの「クニ」でこそ祀るべきではないのか。「クニ」の範囲はフィクションであり人それぞれだけれども、第三者がその範囲を国家だけと決定するのだとしたら、そこに恣意性が介在してくるのではないか、そして死者を利用することになるのではないかと思いました。
「我々」や「敵」の存在を強調することに主眼を置いた議論には、「我々」とはいったい誰の事なのか、「敵」とは本当に実在するのか、「我々」「敵」を分ける言説はどんな利害を持っているのか、「我々」と「敵」を名指しているのは誰なのか、そのことで自分はどうなるのか、ということを考えることが許容されなければならないと思います。会場内では「我々」も「敵」も当然のように自明であり、それを問う雰囲気はなかったように思います。

AreiRaise公演 「矜持」

靖国神社・崇敬奉賛会が戦後60年の特別企画として『日本が好きになる歌』をテーマに、プロ・アマ問わず、一般から公募したとのこと。会場では審査員特別賞を受賞したHIPHOPバンドのAreiRaise(エーレイライズ・・・「Arei=英霊」)が「矜持」という曲を公演しました。

会場で「NIPPONのうた」のCD売ってたけど、今思えばある意味貴重だったので買っとくべきだったのかなぁ。とりあえず会場でこんな曲が聞けたYO!

"NIPPONのうた"審査員特別賞受賞作品

  • 「矜持」 AreiRaise
    • 作詞・作曲・編曲:AreiRaise
    • Rap:斉藤"七生報国"俊介
    • Vocal:コパ・ザ・大艦巨砲
    • Chorus:斉藤"七生報国"俊介、コパ・ザ・大艦巨砲、山崎"八紘一宇"剛史

あの原子爆弾 2個もってして
焼き尽くせなかったもんですぜダンナ
あんな惨禍超えてきたんだ
やっぱ日本てスゲー
少ない鉱物資源
核という名の人体実験
克服してきた人材人間の
子孫がここにはいっぱいいるぜ
日清・日露・大東亜聖戦
江戸・明治・大正・昭和・平成の
経験が詰まった先人の英知に
今こそ学べ 前進の精神
こそが何ものにも換え難い
未認定無形重要文化財
逆襲の日本はさあ来るぞ
まずは心に核武装


(※)
日本 美しき国
日本 日が昇る国
日本 素晴らしき国
日本 日本 日本 日本
日本 神の住む国
日本 大好きな国
日本 俺達の国
日本 日本 日本 日本


人は何かの犠牲の上に立つが
大事なのはその上に何を為すか
戦争終わってもう60年
いい加減迎えよう 英霊と終戦
負けると知りつつも立ち向かう
時に命賭して勝ち掴む
それは善悪超えて尊いしデカい
俺たちのご先祖は間違ってない
俺ただ日本が好きなだけ
右でも左でもねえ ただのハゲ
大好きな日本と日本人
忘れんな希望と自尊心
まず声を出せ日本男児&女子
神風の魂はいつもここに
"典型的日本人"の使い方
変えてやれ まずHIPHOPシーン


(※くりかえし)


やっぱこの国本当好き
だから心もそう黄金の国で在りたいね
俺ら日本人あるぜ一本芯常に日々精進
時間を超え歌声よ届け
いつだってきっと会えるここで
想いは必ず響き合う
靖国の空で虹になる
俺達には出来ない事もある
でも僕らだから出来る事がある
こんな俺達でもやれる事
あるなら歌おう声涸れる程
受け継いだもの忘れないで
いつも心に想い描いて
そして繋げる次の世代へ
共に歩んで行く未来目指して


(※くりかえし)

最後にひとことだけ言わせてください。
「まずは心に核武装」? HIPHOPなのになんたるヘタレw


※要注:以上のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。


―――【追記:2006/02/08】―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

KawakitaのBookmark(2006/01/30-02/05)