シンポジウム「おかしいぞ!警察・検察・裁判所」第4弾・共謀罪をぶっつぶせ! 参加

おかしいぞ!警察・検察・裁判所―市民社会の自由が危ない文京シビックホールで開催されたシンポジウム「おかしいぞ!警察・検察・裁判所」の第4弾が共謀罪についての話ということで行ってみました。過去に開催されたシンポジウムの内容は創出版から『おかしいぞ!警察・検察・裁判所―市民社会の自由が危ない』という題名で書籍化されているそうです。


今回のシンポジウムでは「共謀罪」がメインテーマでしたが、「警察・検察・裁判所」の現状についてのシンポジウムなので以下のように様々なことが報告・議論されました。

  • 第二部では事件概要報告ということで「立川反戦ビラ事件」「国公法弾圧事件(堀越事件)」「JR浦和電車区事件」「連帯労組関西生コン支部弾圧事件」「板橋高校事件」の当事者の方が事件の実態を知ってもらおうと事件の概要報告をされていました。
    • (一方の話を聞いただけですので判断は早計かもしれませんが)全般的な傾向として、刑法の何らかの形式にあてはめただけの内実を問わない逮捕・拘留がなされ、逮捕者・拘留者に悪い印象を与える報道がなされており、その後起訴できず不当逮捕・不当拘留が明らかになったり、一審で無罪判決がでる時点では世の関心は全く遠ざかっているという状況があるようです。また検察はそれでも控訴して有罪を勝ち取ろうとする傾向にあると言うことで(裁判所も逆転判決を出す可能性がままあるそうで)、ある特定の方々への「弾圧」と呼べるものが行われている可能性が高い状況が報告されました。

以下は、共謀罪の審議について勉強になった点のメモです。


※要注:以下のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。

審議の経緯と現在の状況

  • 日本政府は2003年に国会で初めて「共謀罪」を提案し、過去2度廃案となり、2005年の特別国会で3度目の上程をして再度(2006年)審議されている状態。
  • 5月末に「共謀罪」は継続審議入りが予想されたが、5月31日になって与党が民主党の修正案を全面的に受け入れて可決したいと切り出した。自民党民主党の修正案に対して内容を見ずに賛成。
  • 6月に可決しようとしたのは7月末に開催されるサミットのため。G8で批准していない国はドイツとイタリア(まもなく批准予定)と日本。日本も批准できる状態を示すために、民主党案の丸呑み可決が行われかけた。
  • 自民党は条約が批准できない状態を作り出してその理由を民主党案の内容とし、その後共同修正すればよいと考えていた。
  • 民主党は採決に応じず継続審議となった。6月6日現在では共謀罪は全く審議されていない。

共謀罪」が審議される遠隔・前提

  • 国連の組織犯罪防止条約を2000年に日本政府が署名。国内法を整備して条約を批准するというのが議論の出発点。
  • 1994年のナポリ・サミットから国際的な組織犯罪に取り組む動きあり「国際組織犯罪に関するナポリ成立宣言」を採択。コンスピラシー(Conspiracy:共謀・陰謀)を犯罪とするため「共謀」を法律化し、各国の必要に応じて国内で組織犯罪と闘う能力を強化し国際的な協力を考慮すべきと提言。
  • その後、2000年に国連で組織犯罪防止条約が作られた。これは2001年のテロとは関係ない。組織犯罪として想定されているのは薬物犯罪やマフィア・暴力団。9.11のあとテロ対策にも利用されているが、そもそもは関係がなかった。
  • 2004年に国連で「組織犯罪防止条約」批准のために国内で立法化するにあたってのガイドが制定。
    • 国内法の起草者は新しい法が国内の法的な伝統・原則・基本法と一致するようにしなければならない、国内の法体系と合致させるべきである、と書いてある。
    • 適切な法的な概念を持たない国においては「共謀罪」または「結社罪」という名の制度を導入することなしに組織犯罪に対して効果的な措置を講ずることを許容するものとする、と書いてある。
  • 条約では各国の憲法をあくまで優先としてあり、憲法の保障している権利を侵害してまで法律を制定するものではない。

政府による「共謀罪」推進の目的不明瞭性

  • 越境性・国際性があるときに適用するということが国連の条約に記載されているが、一国内で起こったことでも実質的に他の国で影響があるものは越境性があるとしている。国内犯罪であっても適用される可能性を条約自体が含んでおり問題がある。
  • 政府は相当に範囲の広い共謀罪を提案している。組織犯罪集団は限定されていると感じるが、法務省の説明では何でも入りうるのでいくら修正しても本質的な問題は解決しない。
  • すでに百カ国以上が国連の組織犯罪防止条約を批准しており日本も条約を批准するために共謀罪を立法化すべきと言われているが、各国でどれだけ「共謀罪」に当たるものが成立したかということについて、政府は不明という回答を繰り返している。外務省はこれから調査するとして明らかにしない。
  • 共謀罪」にあたるものは英米に古くから存在。組合弾圧に使用されてきた歴史がある。各国が条約批准のために新たに「共謀罪」にあたるものを作ったかは疑問。

解決案

  • 条約を批准した百数カ国の実態について外務省はわからないという答弁ばかり。
  • 各国を独自に調べれば、600を超える共謀罪を制定させるということ自体が壮大なペテンだった可能性がある。
  • 現在ある法律ですべてカバーでき条約は批准できるのではないか。野党で勉強して何らかの内容を出すことを検討中とのこと。
  • 共謀罪」廃案の可能性もまだ残されている。


※要注:以上のものは私が見聞きしてきたことを書き留めたものであり、発言者の真意を正確に反映しているとは限りません。

追記:2006-06-08

対論講義・宮台真司氏×井庭崇氏「方法としての社会学-実践、道具、共通言語として- 」動画

慶応SFCで行われた宮台真司氏×井庭崇氏の対談講義がネットで視聴できるようです。
※視聴にはユーザー登録が必要なようです(無料)